実例を元にしたフィクション連載
患者情報:84歳 女性 要介護5
現病歴/心不全 慢性腎不全 アルツハイマー型認知症 バルーンカテーテル留置
サービス/訪問診療 訪問看護(訪問リハ) 訪問入浴 訪問歯科診療
この日もTさんはベッドの上で菓子パンに手を伸ばすところでした。
Tさんは透析治療を拒否され在宅で訪問サービスを使いながら生活されています。
今日のお昼ご飯はジャムパンかな。
いつも同居のお嫁さんがベッドサイドに置いて仕事に行くようです。
飲み物はベッド脇のサーバーから水をマイカップに入れて飲むシステム。
同居のお嫁さんはあまりお義母さんに構いたくないことが伺えます。
「今日もパンですか?」と聞くと「あたしはパンが好きなのよ」といつもTさんは答えます。
入れ歯の調子を聞いても「調子いいよ。なんでも食べられる」
ほんとかな…性格かしら。否定的な言葉を聞いたことがない。まぁ、確かにミニサイズ5個入りのジャムパンかチョコパンかクリームパンのローテーションから答えを探すなら「なんでも食べられる」になりそう。
「あたしは幸せ。こんなになっても嫁さんが用意してくれるから」と会うたびにTさんは言いますが、なんとなくもやもや…。
そうこうしているうちに、ジャムパンをはむはむしようとし始めました。
認知症だから仕方ないとはいえ、先生が診てからにしてね!
Tさんのわずかに残っている歯は全部虫歯で折れているか今にも折れそうですが、
重い心不全と腎不全があり抜歯はできません。
その上ほぼベッド上での生活で、介助がないと日常動作が難しく歯磨きはほとんどできていません。
訪問では口腔ケアを中心に行っていますが、食事は基本的に菓子パンのローテーションだし家族の協力がないとこれ以上の改善は難しいというのが先生と私の共通理解…。
たまには煮物でも食べられると口腔内も多少すっきりしそうですが、「あたしはアンパンはあんまり好きじゃないのよ」なんて突然言い出すし、咬み合わないのはTさんの歯だけじゃないみたい。
一瞬ジャムおじさんの顔が浮かんだ私は、「ジャムおじさんなんて知らないよなぁ」と呟いたら
「あー、パンを作ってる人だよねぇ」
知ってるんかーい!聞いてたんかーい!
Tさん、にやり。・・・あれ?認知症じゃ? 昭和の女先生、恐るべし!
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